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2007年1月31日 (水曜日)

金刀比羅宮:円山応挙

前回の日記(地中美術館:サイトスペシフィック)の
最後にも書いたが、
通常サイトスペシフィックと言う場合、
前提としてアーティストが関わる以前に、
既に歴史・記憶を持ち、形を持った場所があり、
それに対してのアプローチとして作品が作られ、
設置される事を指す。

地中美術館のようにアーティストが、
建築から何から何までアーティストが関わって制作が
行なわれる事は非常に稀な事である。

クリスト&ジャンヌ=クロードの特定の場所、
(マイアミ付近の湾に浮かぶ11の島の周りの海や、
ポン・ヌフの橋、ドイツの国会議事堂など)を梱包したり、
カーテンをかけたりした行為は、それぞれの場所を、
観念によって浸食する事で作品足ろうとする、
サイトスペシフィック作品であると言えるだろうし、
ランド・アート、アース・ワーク、
それからパブリック・アートもまたこの名で語られる。
つまりサイトスペシフィックとは極めて広義の
ぼんゆありとした言葉なのだ。

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直島に行った明くる日、金刀比羅宮へ行く。
長い階段を延々と昇り、各文化施設
(実際にはそのほとんどをタイミングを逸し
観れなかったのだが)、
鈴木了二の金刀比羅宮プロジェクト等を鑑賞。

建築そのものはもちろんであるが、
その中で、表書院を飾る円山応挙(1733〜1795)の
障壁画もまた、サイトスペシフィックな作品、
建築に帰属する性質を持った絵画と言える。
90枚全てが国の重要文化財に指定される
江戸中期に制作した応挙の代表作。

その全ては襖絵であり、実際に表書院の広い各部屋に
設えられていたわけだが、鑑賞者は各部屋を繋ぐ、
長い縁側のような渡り廊下からガラス越しに、
4〜6メートル離れたそれぞれの空間を眺める。

「遊虎図」に描かれた虎のコミカルで
多様な表情は、否応無く観客の視線を引きつけ、
それは時間を止め、瞬間、その周囲、部屋全体に、
湿度を伴う、どろっとした重い
大きなうねりを体感させる。

そして「山水図」は、アメリカ抽象表現主義、
カラーフィールド・ペインティングの作家、
クリフォード・スティルのように画面(襖)、
いや、観客の網膜をぶった切る。

ガラス越しに見ていたせいで、
ほとんどボックスアートを見るような形でしか
鑑賞する事は出来なかったわけだが、
しかし、これらの薄暗い自然光に照らされた障壁画は、
近代的な「絵画」というよりも、
むしろ古代洞窟壁画のような、観るものの共振を強要する、
原初的な体験の場として、その佇まいを見せていた。

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