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2007年1月30日 (火曜日)

地中美術館:ジェームス・タレル

ここでは三点のタレル作品があり、
家プロジェクトの作品を合わせれば、
合計四点のタレルの作品を、直島では
観る事が出来る。

まず眼に飛び込んで来るのは、
補助光の抑制された地下の薄暗い
部屋の角に青白い、六角形の形状の光を
プロジェクションした
作品「アフラム、ペール・ブルー」である。

これはタレルの光を用いて制作を開始した
最初期の作品であるが、私にとっては初めての
体験であった。

白く、視覚的にテクスチャーの
極めて希薄なその白い光は一瞬にして、
それが壁に投影されている事はおろか、
如何なる仕組みである事かという思考を停止させる。

歩を進め、角度を変えてみると形を変える、
宙に浮くその光の物体は奇妙な官能的な場所へと誘う。

そして近づいてゆくと、
突如、黒い物体に暴力的に頭を殴られた思いがした。
私は身を仰け反り、その物体の正体を知る。
黒い物体とは自身の影であったのだ。

そうして私はこの作品の経験を終了し、
現実の世界に引き戻された。

私はこの作品の仕組みを事前に
諸メディアによって知っていたにも関わらず、
こうした体験を与える事の
出来るこの作品の持つ吸引性に驚く。

(残念ながら、全ての作品を見終わり、
再びこの作品の前に立った時、
あの衝撃は既に過去のものとなっていたのだが。)

そうしてこの作品について思いを馳せている中、
監視員に呼び止められ、
次の作品「オープン・フィールド」に
誘われ、解説を受け、四角く青い光の中に入る。

その青い光に満ちた部屋の奥にはさらに四角い
穴が開けられ、色身の違う青色の部屋が
まだ存在する事を確かめる事が出来、
奥には無限に空間が広がっているかに見える。

影はほぼ映らず、色によって支配され、
通常のものを見る作法を麻痺させるように、
設えられたらしいその空間は、距離感を失わせ、
眼球に浸食し、包み込む。

(そうして青い光に汚染された中で、振り返ると
入って来た、やはり四角い白いはずの開口部は
真っ赤な光の空間へと変貌している)

ほとんど何が起こっているのかわからないうちに、
それらはなされ、鑑賞者はなすがままに
青い光と同化する。
何かを考える余地などそこにはない。

この経験は決して心地の良いものではない。
強制的に白雉状況にされたその先に、
何かが見えるという事があるのかどうか、
私にはまだわからない。

(ここでもまた、アルバイトらしい監視員は
作品の邪魔にしか働かず、不快。)

「オープン・フィールド」を出て、少し進むと
天井が正方形に切り取られた、壁面の真っ白い、
「オープン・スカイ」の部屋がある。

四角く切り取られた、ツインタワービル崩壊時のように、
抽象的な真っ青な空は、それだけで、傍若無人に
鑑賞者の脳みそをぶっ飛ばす。

ここでもまた、鑑賞者はなすがままに、
白雉的な状況に追い込まれるわけだが、
私はそうして5分、10分と時間を過ごす中、
一筋の鳥が飛ぶのを目撃し、それをきっかけに
この部屋がこれまでの作品とはまったく違った
ものである事を理解する事が出来た。

人の脳の限界点まで追いやり、
見えない未開の地を見せる事に
この作品の目的が在るのではない。

この作品は、そのものを見る鑑賞者の内に
あらゆるタイミングによった一点の奇跡として
感覚とは浮上するものである事を
気が付かせる装置なのだ。

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