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2007年5月20日 (日曜日)

魔法が解ける瞬間は突然やってくる

ジダン 神が愛した男 DVD ジダン 神が愛した男

販売元:アミューズソフトエンタテインメント
発売日:2006/11/24
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「ジダン 神が愛した男」(2006/7/15公開)を観た。サッカー史上最も偉大な選手の一人と評価され、2006年7月9日のFIFAワールドカップ・ドイツ大会決勝(対イタリア戦)を最後に引退した、フランスの英雄、ジネディーヌ・ジダン(b.1972)。この映画は、タイトル通りジダンの映画である。ジダン1人を、一試合、17台のカメラで追う。ただそれだけだ、と、言っていい。試合は2005年4月25日、レアル・マドリードVSビジャレアル戦。原題は「 ZADANE un Portrait du 21e Siecle」、つまり「ジダン:21世紀の一つの肖像」。

1)この映画の鑑賞者は、おのずと17台のカメラという主観によって、試合の観客やチームメイトよりも、ずっとずっと間近にジダンを感じることになる。ジダンの息づかいや、スパイクが芝を蹴り上げ、試合中、その瞬間瞬間に、フィールド上のそこ以外ない居場所を寸分違わず獲得してゆく、その動きを、音を、ジダンを、17台のカメラと共に分かち合うのだ。時折、劇中に流れるスコットランド・グラスゴーのバンド「モグワイ」の音楽や、様々に交錯する歓声、テロップのジダンの言葉も、どこか、遠くで鳴る遮断機の警報のように現実味がなく、その現実味のなさが、ますます、ジダンという現場を強調し、鑑賞者をその現場に引きずり込む。

2)試合の内容は、まったくと言ってもいいくらいわからない。テレビ放映のそれのような、俯瞰した映像も登場するが、試合の成り行きを説明出来るような代物ではなく、後半戦でジダンのアシストにより点が入るシーン(実際の試合の観客は盛り上がる)でさえ、その瞬間は「え?ジダンが入れたの?違うの?」ってくらい。当のジダンも淡々と、息を荒くして自陣のフィールドに戻ってゆくだけだ。しかし不思議に、サッカー鑑賞に独特の、常に下っ腹に軽く力を込め、鼻で静かに呼吸する事を強いられ見守らざるを得ない、張りつめた空気は依然として顕在、、いや、それらはむしろ濃厚でさえある。

3)終盤、「魔法が解ける瞬間は突然やってくる」というジダンの言葉が字幕としてインサートされ、そしてその後、ジダンは相手選手のプレイに抗議し、エキサイトし過ぎた事でレッドカード〜一発退場。ジダンのこの試合の幕引きであり、この映画の幕引きである。このラストシーンは、ジダンの引退試合となった2006年ワールドカップ決勝の「頭突き一発退場」という、伝説のサッカープレイヤーの衝撃の幕引きと、重ね見られているが、しかし、私には、この退場シーンではなく、そのもう少し前に、ジダンが劇中ではじめて見せた、それまでの心理的無風状態から鑑賞者、或いはジダン自身を開放するかのような、柔らかな「笑顔」こそ、「魔法が解ける瞬間」であったように思える。

イッタイワタシハナニヲミタ?

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「ジダン:神が愛した男 / ZIDANE :Un portrait du 21e siecle」公式HP
http://www.zidane.jp/
ジネディーヌ・ジダン(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%80%E3%83%B3

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